カーテン越しの君【完】

ミーハーな菜乃花

「毎日のように聴き続けているから、私まで歌を覚えちゃうよ」

「良かったら、一緒にハモる?」


「その歌に興味なし」

「じゃー、菜乃花は何に興味があるの?」


「えへへ。私が興味があるのはあっちかな」



彼女が窓の外へと伸ばした指先が向かったその先は、多数の芸能人が通う芸能科が入っている同校の西校舎。



「芸能科のアイドル君たちかなぁ」

「また、そっち〜?」


「だってぇ。芸能科には私が好きなアイドルグループの《Beans》のハルくんが通ってるから」

「普通科と芸能科は校門が違うから、まだ一度も校内で会えていないでしょ」


「いつかは会えるかもよ。同じ校舎の空気吸ってるんだもん」

「無理無理。芸能科への入り口がシャットアウトされているし、先生達の見張りが厳しいでしょ」


「いーやっ。何とかして卒業前までには絶対ハルくんの彼女になる」

「同じ高校なのに出会えるチャンスがないから、その夢は叶いそうにないよ…」



ミーハーな菜乃花は、芸能科に通うハルくんの熱狂的な大ファン。


耳にイヤホンが付いてる時は《Beans》の曲を聴いてる証拠。

CD、DVD、グッズや雑誌の切り抜きなど。
ハルくんに纏わるものは全て集めているほどの熱狂的なオタクっぷり。


だからこそ、休み時間になる度に教室の窓から顔を覗かせハルくんの行方を探している。
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