恋がはじまる日

動き出す気持ち

 綺麗な夕焼け空が校庭を温かなオレンジ色に染め上げている。日中暑いくらいの日差しであったにも関わらず、夕方になると少し肌寒さを感じた。

 今壇上で行われている校長先生のちょっぴり長いお話が終われば、今年の体育祭の全日程が終了する。
 総合優勝は白組。クラス優勝は接戦の末、二位で終わってしまったけれど、今年の体育祭は私にとってすごく思い出に残るものになった。

 色んなことがありすぎて、まだほんの少し気分が高揚しているように感じる。障害物競争で怪我をしたことも、今となっては意味のあることだったのかなと思える。だってあの怪我がなかったら、藤宮くんに保健室に連れていってもらうことも、ましてや彼に対する恋心に気が付くこともなかったのだろうから。

 出会った頃には、仲良くなるのは難しそうだと思っていたのに、いつからだったのだろ。いつから私は、彼に惹かれていたのだろうか。


 これが恋…?


 分からないことだらけの初めての気持ち。

 恋って不思議だなぁ、なんてことを少し高揚した気持ちで漠然と思った。

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