恋がはじまる日
また少し寒さが深まってきた一月の終わり。時は昼休み。
凍てつくような寒さが続き、私は身体を温めるため、一階のカフェテラスにある自販機まで、あたたかいココアを求めに歩いた。
「うー、寒い」
ダイレクトに外の風が身体に吹き付けてきて、ものすごく寒い。ちゃんとブレザーを着てくればよかった。
温かいココアを大事に手に持ち、急いで教室に戻ろうとした、その時、
「私と付き合ってください!」
突然女の子のそんな声が聞こえた。
私は急いで通路の柱に隠れる。
び、びっくりしたぁ。告白、だよね?
私は遭遇してしまった告白現場から、気が付かれないよう教室に戻ろうとした。
声の方から背を向けるように歩き出そうとした時、聞こえてきたのはよく聞き覚えのある声だった。
「あー、えっと誰?」
え?
その瞬間、私の足は根が張ったようにその場から動かなくなってしまった。
今の声、藤宮くん?
聞き覚えのありすぎる声に、心臓がどくんと大きく跳ねた。
そうでありませんようにと願いながら、柱の陰からこっそりと二人を覗き見る。
しかし私の願いも空しく、告白されている男子生徒は藤宮くんだった。
そっか、藤宮くんモテるんだっけ。
転入当初は結構告白されてたみたいだ。最近はそんなことないみたいだったから油断してた。
私はその場に呆然と立ち尽くした。
途端に落ち着かない気持ちになって、漠然と、ああ嫌だなぁ、という気持ちが心を埋め尽くしていた。
なんなんだろうこのもやもやした気持ち。
また心臓がうるさく跳ねて、苦しくて、どうにかなってしまいそうだった。
いつもの藤宮くんに対するドキドキとは違う。なにかすごく嫌な感じ。