恋がはじまる日

 また少し寒さが深まってきた一月の終わり。時は昼休み。
 凍てつくような寒さが続き、私は身体を温めるため、一階のカフェテラスにある自販機まで、あたたかいココアを求めに歩いた。


「うー、寒い」


 ダイレクトに外の風が身体に吹き付けてきて、ものすごく寒い。ちゃんとブレザーを着てくればよかった。
 温かいココアを大事に手に持ち、急いで教室に戻ろうとした、その時、


「私と付き合ってください!」


 突然女の子のそんな声が聞こえた。
 私は急いで通路の柱に隠れる。


 び、びっくりしたぁ。告白、だよね?


 私は遭遇してしまった告白現場から、気が付かれないよう教室に戻ろうとした。
 声の方から背を向けるように歩き出そうとした時、聞こえてきたのはよく聞き覚えのある声だった。


「あー、えっと誰?」


 え?


 その瞬間、私の足は根が張ったようにその場から動かなくなってしまった。


 今の声、藤宮くん?


 聞き覚えのありすぎる声に、心臓がどくんと大きく跳ねた。
 そうでありませんようにと願いながら、柱の陰からこっそりと二人を覗き見る。
 しかし私の願いも空しく、告白されている男子生徒は藤宮くんだった。


 そっか、藤宮くんモテるんだっけ。


 転入当初は結構告白されてたみたいだ。最近はそんなことないみたいだったから油断してた。
 私はその場に呆然と立ち尽くした。

 途端に落ち着かない気持ちになって、漠然と、ああ嫌だなぁ、という気持ちが心を埋め尽くしていた。


 なんなんだろうこのもやもやした気持ち。


 また心臓がうるさく跳ねて、苦しくて、どうにかなってしまいそうだった。
 いつもの藤宮くんに対するドキドキとは違う。なにかすごく嫌な感じ。
< 132 / 165 >

この作品をシェア

pagetop