恋がはじまる日
「え!ここ座るの!?」

「座ったらだめなのか?」

「え、いやぁそんなことないけど…」

 今は藤宮くんと何話したらいいか分からないよ…。さっきの告白はどうなったの?なんて返事をしたの?藤宮くんとさっきの子は仲が良いの?


 私、藤宮くんのこと、全然知らない。

 誰と仲が良いとか、何して過ごしてるのかとか、どんなものが好きなのかとか。


 ああ、なんだかどんどん暗い方に気持ちが流れていっている気がする。

 よくないとわかっていてもどうしても不安な気持ちが溢れてしまう。
 気が付かれないよう、私はこっそり息をはいた。


「佐藤はさ、」

「え…?」


 黙ってココアを飲んでいた藤宮くんが、不意に口を開く。


「三浦の、どんなところが好きなんだ?」

「えっ?」


 突飛すぎる質問に私はきょとんとしてしまう。


「え、椿の好きなところ?」

 なんで今そんなこと聞くの?藤宮くんってたまに突飛な質問をする。体育祭の時も、藤宮くんの気になる女の子が私だったら、なんて。いつもどういう意図が合っての質問なんだろう。


 私は少し考えてから、ぽつぽつと話す。


「え、えっと、前向きで明るいところとか、誰とでも仲良くなれるところとか、優しいし、ちょっと勉強はさぼりがちだけど、いつも元気をくれて、一緒にいて楽しいところとか、かな」


「ふーん」


 え?これなんの質問だったの?藤宮くんの好きなところだってたくさん言えるよ。どうして椿のことを聞いてきたんだろう?
 よくわからない質問の流れにのって、私も思い切って質問を返してみる。


「じゃ、じゃあ、私も!ふじ、あ、男の子はどんな女の子が好きなのかな?」


 藤宮くんがどんな女の子を好きになるのか、これで少しはわかったりするかな。
 そう思い質問してみた。

 藤宮くんは、どんな女の子なら、好きになってくれますか?

 私の質問に、藤宮くんは少し諦めたような笑いを浮かべた。
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