恋がはじまる日
緊張で手が震える。拳に力を入れていないと、言葉まで震えてしまいそうだ。心臓がうるさいくらいに高鳴る。落ち着け、と言い聞かせながらゆっくりと言葉を続ける。
「言い方きつかったり、からかってきたりするけど、不器用なだけで、本当は優しい人だって知ってるよ。そんな藤宮くんに私は惹かれたの。いつも助けてくれて、優しくしてくれて、本当にありがとう」
もう一度勇気を振り絞って、あなたにこの気持ちが届きますように、と祈りながら口にする。
「藤宮くんが好きです」
少し声が震えてしまっただろうか。ただ自分の気持ちを伝えるだけなのに、泣きたい気持ちになる。涙がこぼれそうになる。胸が苦しい。
藤宮くんは、どう思ったかな。これで少しは、私のこと女の子として意識してくれる?
彼は驚いたような表情で私の言葉を聞いていた。そして浅く息をはいた。
「…俺はずっと、佐藤は三浦のことが好きなんだと思ってた」
「椿は、」
「だからただの幼なじみだって言うんだろ。だとしても、他人からはそうは見えないんだよ」
呆れたように大きくため息をつく藤宮くん。
彼は私に一歩近付く。その距離の近さに私の心臓はまた暴れ出す。真っ赤になった顔を見られるのが恥ずかしくて、私はうつむいた。
すると優しく抱き寄せられ、私の身体はすっぽりと藤宮くんの腕の中におさまった。