恋がはじまる日

 私をぎゅっと抱きしめる藤宮くんの腕は優しくて、とても温かかった。


 急に抱きしめられて混乱した私は、口を開こうと顔を上げようとして、そのまま彼の肩に押し付けられた。


「わ、っぷ」


「顔、上げるな」


 心臓が破裂しそうなくらいに鳴っている。でもこれは、このドキドキは私のものだけじゃない?藤宮くんもドキドキしてるの?


 落ち着かない気持ちで彼に抱きしめられたままでいると、上から



「俺も、佐藤が好きだ」



 そうはっきりと聞こえた。


「うそ!」


 藤宮くんの言葉に思わず驚いて彼の顔を見上げると、また顔を肩に押し付けられる。


「顔上げるなって言っただろ」


 一瞬見上げた彼の顔は、見たことがないくらい赤くなっていて、照れているように見えた。


 見間違い?夕陽のせい?


 浅くため息をついた後、藤宮くんは話し出す。


< 147 / 165 >

この作品をシェア

pagetop