恋がはじまる日
「始めはお前と三浦とくだらない話をしてるのが、まぁ、楽しかった。でも楽しそうにしてる佐藤から、いつからか目が離せなくなってた。ほんとは気付いてたんだよ、俺はきっと、あの冬の日から、佐藤のことが気になってたんだ。からかってばっかりで悪かった。佐藤の反応が、可愛かったから」
私はなにも考えられずに、ただただ彼の言葉を聞いていた。
「俺も佐藤が好きだ。ずっとそばにいてほしい」
そう静かに言われて、私の顔は更に熱を帯びていく。心臓なんて、走ったときみたいにドキドキしている。
藤宮くんが私のことを好きなんて、信じられない。嘘じゃないんだよね?
ようやく緩められた腕から、ゆっくりと顔を上げる。
少し照れたような表情を浮かべながら、藤宮くんは微笑む。
藤宮くんのこんな顔見たことないかも、とちょっと見惚れてしまった。
なんと口を開いたらいいのか、ドキドキしすぎてうまく顔も見れない。
「あの、えっと、私を好きとは本当なのでしょうか?」
「嘘ついてどうするんだよ」
「そ、そっか…」
つまり、私達は両想いだった、ってこと?
その事実がまた私の顔を真っ赤にさせた。どれだけドキドキしたら治まるのだろうかこの心臓は。
「えへへ、嬉しい」
自然と笑みがこぼれる。嬉しい、藤宮くんに気持ちが伝わって、彼の気持ちも伝わって。なのにどうしてだろう、頬には大粒の涙が伝っていた。嬉しくて嬉しくて仕方がないのに涙が止まらない。
その姿にぎょっとする藤宮くん。私は慌てて笑おうとする。しかし涙は止まるところを知らなかった。
「ごめんね、嬉しくて。ありがとう、藤宮くん」
そう言うと、藤宮くんは何も言わず、また私を優しく抱きしめてくれた。