恋がはじまる日

 ジリリリリリリリリリリー!!

 時刻は七時五十八分をまわる頃。けたたましい音を鳴らしながら目覚まし時計とスマホのアラームが部屋中に鳴り響いていた。


「うるさいなぁ、もう~」


 心地よい布団の温もりに抱かれながら、私は渋々身を起こす。

 スマホの時刻を確認すると、八時ちょうど。八時、八時…。私のぼやっとしていた脳は、一気に覚醒した。


「え!?寝坊したー!」


 叫びながらベッドから飛び出し、慌てて身支度を整える、夢とは正反対の現実。

 寝ぐせ直らない~!

 ぴょこんと跳ねる毛を力強く押し付けながら髪を梳かし、急いでワイシャツに袖を通す。赤のネクタイをきちっと締め、ブレザーを羽織った。姿見に映る自分の姿をさっと確認する。


「よし!」



 春。

 四月。

 新学期。

 高校二年生に進級した私、佐藤 美音(さとうみお)は、盛大な寝坊で初日の幕を開けていた。


「もー!朝はゆっくり過ごしたいのに!」


 完全に自業自得ではあるけれど、文句を言わずにはいられない。

 階段を駆け下り、勢いそのままに台所へと飛び込む。テーブルの上に支度されていた朝食のパンを一気に口へと頬張った。

「ちょっと!行儀悪いわよ」という母の声を背中に受けながら、今日も元気に家を飛び出した。


「いってきまーす!」

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