恋がはじまる日
三人で並んで歩く帰り道。この三人で帰ること自体ちょっと落ち着かなかったのだけども、なんと言っても私を真ん中にした並びがかなり落ち着かなかった。なぜに私が真ん中なのか。なんとなく空気が重いし、いつも賑やかな椿があまり口を開こうとしない。
落ち着かず辺りを意味もなくきょろきょろと見ていると、ようやく椿が口を開いた。
「藤宮いるけど、勉強会、美音ん家でいいの?」
椿は相変わらず不貞腐れたような顔で私に尋ねる。
私は大丈夫だよ、と答えかけたところで藤宮くんに先を越された。
「駅前のカフェとかでいいだろ」
「あ、そうだよね!うちから藤宮くんのお家帰るの大変だよね、気が付かなくてごめんね。じゃあ、駅前のカフェにしよ」
そう答えると、彼は小さくため息をついたような気がした。
「別に、そういうことじゃない」
「?」
私が首を傾げていると、藤宮くんは椿に向けて言う。
「お前いつもこいつの家行ってるのか?」
「は?当たり前だろ、幼なじみなんだから。それがどうかしたのかよ」
椿も私と同じように首を傾げる。
その様子を見た藤宮くんは、呆れ返ったような深いため息をもらした。そのまま私に向かって言う。
「お前な、少しは警戒しろよ」
そう言われた私はますます訳が分からなくて。
「え、なに?なんのこと?」
そう聞き返す。
怒っているのか、面倒なのか、藤宮くんは眉間に皺を寄せると、
「揃いもそろって鈍感だな。分からないならいい」
とそっぽを向いてしまった。藤宮くんは何を言いたかったのだろうか。
私と椿は顔を見合わせて、やはり小首を傾げるのであった。