恋がはじまる日

 そうこうしているうちに、駅前の小さなカフェへと到着。
 入口に大きなポスターが貼ってあり、そこにはチーズケーキとドリンクのセットが写されていた。すごく美味しそう!カフェに来ると甘いものも一緒にほしくなっちゃうなぁ。

 店内は落ち着いた雰囲気の照明と、おしゃれなジャズが流れていて、勉強する学生やパソコンに向き合っているお仕事中の方やらで、席は七割くらい埋まっていた。


「美音、俺、美音のも買っておくから、先に席取っておいてよ」

「わかった!それじゃあミルクティーをお願い」

「おっけー」


 藤宮くんはどうするのかな、と横目でちらりと窺っていると、「藤宮、お前は自分で頼めよな」と椿が藤宮くんをレジへと引っ張っていった。


 椿は本当にどんな人とでも話せるなあ、などと感心しながら、どこかちょうどいい席はないかな、と辺りを見回す。
 窓際の三人が座れそうなソファ席を見付け、そこに腰を下ろした。   

 二人が来るまでそわそわと落ち着かない気持ちで待つ。カフェに来ることもほとんどなかったので、ちょっと緊張しているのかもしれない。いつもはファミレスとかだし。


 あ、雨。


 ふと視線を窓の外に向けると、お店の窓ガラスに水滴がぽつぽつと増えていくのが見えた。

 五月が終わったらあっという間に梅雨入りかなぁ。


 窓の外の様子を漠然と眺めながら、どうして藤宮くんは勉強を教えるなんて言ってくれたのかな、と考えていた。
思っていたより藤宮くんて、人と一緒にいるのが嫌いじゃないのかな?でも教室だとあまり誰かと話している姿は見ないな。転入してきたばかりだし、まだ仲のいい友達がいないのかもしれない。私達といるのが少しでも楽しくなるといいけど。


 そんなことを考えていると、二人がトレイを持ってこちらにやって来た。
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