恋がはじまる日
「美音、お待たせ!」
「ありがとう、椿」
そう言いながら私がソファ席の奥へと席を詰めると、隣に座ったのは椿ではなく、なんと藤宮くんだった。
「!?」
驚きのあまり、まじまじと彼を見てしまった。
な、なんでわざわざ私の隣に!?学校でも隣の席だけど、いやそれとこれとは違うよね?教室の席より近いんだけど…。
戸惑っている気持ちを落ち着かせようと他に視線を移す。彼のトレイに目を向けると、そこにはコーヒーとチーズケーキが乗っていた。
あ、チーズケーキ頼んだんだ。
とそれどころではなく、やっぱりとても落ち着かない。
私がそわそわしていると、椿がむくれたような声を出して藤宮くんに文句を言った。
「つーか、藤宮、なんでそっち座んだよ」
「隣の方が教えやすいだろ」
「美音には俺が教えるんだから、お前は向かいでいいの」
そう文句を言いながらも、椿は渋々私の前の席へと腰を下ろした。
彼のトレイには、オレンジジュースにトマトのパスタ、それにチョコドーナツまで乗っていた。
少しでも気をまぎらわせようと、椿へと話しを振る。
「ちょっと椿、あんまり食べると夜ご飯入らなくなるよ」
「平気!平気!超成長期だから!これくらい余裕で食える!」
そう話しながら、こちらにミルクティーを渡してくれた。