恋がはじまる日

 学校への道のりを足早に進んでいく。

 春。それは出会いの季節。

 新しい友達もたくさん作りたい!もしかしたら好きな人もできたりするかもしれない!

 桜の舞う街並みを眺めているだけで、期待とときめきに胸が躍ってしまう。それが春である。


「好きな人、かぁ」


 私はまだ恋をしたことがない。初恋がまだな私にとって、恋がどんなものなのかはもちろん分からない。けれど、きっといつか素敵な恋が私にも訪れると信じて、日々を楽しく全力で過ごしている。

 私はどんな人と恋に落ちるんだろう?


「少女漫画みたいな素敵な恋がしたいなぁ、なぁんて」


 漫画の世界みたいに、私を一途に想ってくれる男の子に出会って、素敵な恋をする。そんな日がいつか来るといいなぁ。

 そう思わずにはいられない。寝坊した原因も昨夜遅くまで少女漫画を読んでいたせいだった。
最初はいがみ合う二人だけれど、いつしか惹かれ合って、恋に落ちる…。THE王道!ベタだけど、そんなベタな展開が大好きなんだよね~。

 と、昨日読んだ漫画に想いを馳せている場合ではなくて!


「遅刻しちゃう!」


 寝坊して遅刻ギリギリだというのに、春の暖かな陽気に誘われて、ちょっと浮かれてしまっていたようだ。今がどんな状況かすっかり忘れていた。

 小走りで桜並木を通りすぎる。暖かな優しい風と桜の花びらの舞う景色は、夢とまるで同じだった。

 やっぱり今日はいいことがありそう!なんて、寝坊したことは置いておいて、やっぱり浮かれてしまう。

 視界を通り過ぎるピンクの風景に気を取られながら、いつもの十字路に差し掛かった。


 と、その時だった。

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