恋がはじまる日

 うんうん唸りながらゆっくり解き直していると、藤宮くんがため息をつきながら私に肩を寄せてきた。


「!」


 あまりの近さにびっくりして、ひっと小さく声を出してしまったかもしれない。

 当の本人には聞こえていなかったようで、私の動揺などお構いなしという感じで彼は説明を始める。


「まあ、公式通りに解けばできるけど、とりあえず俺が解くから見てて」

 そう言って丁寧に説明を加えながら、計算式を作り上げていく。


「ここまでは分かるだろ?」

「う、うん」


 私がつまずいていた箇所にくると、ゆっくりと丁寧に解いてくれる。


 分かりやすいな…藤宮くん字綺麗だなぁ。勉強できる人は字も綺麗って言うよね。藤宮くんは成績いいのかな。

 そんなことを思いながら説明を聞いていると、ペンでこつっとおでこを叩かれた。


「あたっ」

「ちゃんと理解したか?違うこと考えてただろ」

「え!そ、そんなことないよ!ちゃんと理解しました!」

「ふーん、ならいいけど」

 と言いながらも、ちょっと不満そうな顔をしている。


 本当は少し集中力が切れていたけれど、それはそもそも藤宮くんのせいです。 


「さ、早速解いてみるね!」


 私は教わった箇所を自分で解くことに専念する。

 その後も、ちょこちょこ分からないところを教わりつつ、試験範囲の苦手単元を無事理解することができた。


「できたー!」


 ここまで数学が解けるのは初めてかもしれない!感動すらおぼえる。数学って解けるようになると楽しいかも!
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