恋がはじまる日
しかしそんな私の希望をあっさりと打ちくだくように、彼は事も無げに言った。
「ふーん、じゃ俺は帰るから」
そう言うと、あっさり校舎を出ていく。
「…………」
ぽつんと一人昇降口に残された私。
何を期待していたのだろう、藤宮くんが傘に入れてくれるわけないじゃない。女子に超絶塩対応なあの藤宮くんだよ?それに…相合傘みたいになっちゃうのは私もちょっと恥ずかしいし。でも…。なんとなく今日の藤宮くんだったら傘に入れてくれるような気がしたんだけどな。図々しい考えだったよね。
さくっと一人反省会をしたところで、相変わらず止む気配のない雨の中、私は濡れて帰る決意を固めた。
「よし!」
気合を入れ雨の中に飛び出すと、思ったよりも雨足は強く冷たかった。
駆け足で校門を出て、あっという間に藤宮くんの横を通りすぎる……瞬間、腕をぐいっと引っ張られた。
「わわっ!」
よろけて体勢を崩しそうになった私を、抱き寄せるように支えてくれる。
あれ、こんなこと前にもあったような…。
腕を突然引っ張ったのも、支えてくれたのも、当然藤宮くんだった。密着する身体に少し緊張しながらも、私は彼を見上げる。