恋がはじまる日
放課後。
降り続いている雨は、今日も当分止みそうにない。
グラウンドメインの部活は、室内で練習できることはほとんどないので休みになることが多かった。
「美音、もう帰る?」
そう椿に声を掛けられ、うーんと答えにつまった。
「部活がせっかくお休みだから、少し図書室で勉強して帰ろうと思ってるんだけど、図書室最近人多いし、ぴりぴりしてて行くか悩んでるところ」
放課後の図書室はみな勉強に使っていたりする。受験勉強でぴりっとした三年生が多く利用する図書室は、物音を少し立てただけでも睨まれるような威圧感があり、正直言うと少し苦手だった。集中するにはもってこいなのかもしれないけれど、変に緊張して余計に疲れてしまう。
尚もうーんと悩んでいると、
「ならうち来いよ、一緒に勉強しようぜ」
と椿が提案してくれた。
「ほんと?それは嬉しいかも!お邪魔しようかな」
有難い提案なのですぐにOKの返事をする。けれど、よくよく考えてみると椿が自ら一緒に勉強しようだなんて、どういう風の吹き回しだろうか?この前の試験勉強の時も、私から誘わなかったら勉強しませんって感じだったのに。少しは心を入れ替えたのかな?
「じゃ、帰ろ!」
「え、あ、ちょっと、」
椿に背中を押され、私達はそろって教室を出た。
藤宮くんに挨拶できなかったな…。