恋がはじまる日
キーンコーンカーンコーン……。
授業終了の鐘が鳴る。
初めての数学の講習を終え、私はへとへとになっていた。
難しい~!進むの早いし難しかった~。半ば涙目ではあるがついていけてはいたと思う!がやはり応用も多く、内容はとても難しかった。けれど普段教わっている数学の先生ではないので新鮮だったし、ユーモアを交えての説明はちょっぴり面白かったかも。黒板で解くということもなく、リラックスして受けられるのはいいなぁ。授業のスピードについていければの話だけれど。
私が凝り固まった身体をほぐそうと、うーんと伸びをしていると、藤宮くんはさっさと帰り支度を終え立ち上がっていた。
「あ、藤宮くん!待って!」
すでに廊下に出てしまいそうな彼を、何故か私は慌てて呼び止めていた。
「何?」
「あ、えっと、」
あれ?私なんで彼のことを呼び止めたんだろう?
藤宮くんは不思議そうにこちらを見ている。
特に用があったわけじゃなくて、でも夏休みに入って会えてなかったから、もう少し話がしたかった、のかな。
でもどうしてそんな風に思ったのか自分でも分からなくて、呼び止めた張本人の私が困り果ててしまっていた。