恋がはじまる日
そこにタイミングよく廊下から元気な声が聞こえてきた。
「おーい!美音ー!」
「椿!」
陸上部の部活終わりなのだろう、ジャージ姿の椿がこちらに駆け寄ってきた。
「よっ!講習終わった?」
「うん、今ちょうど終わったところだよ」
いつもの人懐っこい笑顔を私に向けてくれる椿。しかし私の隣に視線を移すとその笑顔はあっという間に曇ってしまった。
「げ、藤宮」
「三浦、お前相変わらずだな」
「はぁ?っと、藤宮に構ってる場合じゃないんだった!」
椿はいつも通りの藤宮くんとの挨拶(?)を簡単に済ませると、すぐに私へと向き直った。
「美音!今日のお祭り行くだろ?毎年行ってるやつ!」
「あ、そっかお祭り今日だったっけ!行く!」
「おっしゃ!ひとまず帰って支度してから行こ!」
「うん!」
毎年恒例の夏祭りは、うちから歩いてすぐの神社で行われる。
お祭りが今日だったことをすっかり忘れていた。そういえば近所の掲示板にポスターが貼ってあったっけ。
「藤宮くんもお祭り行く?」
せっかくのお祭りだ。藤宮くんはこっちに来たばかりで、地域のイベント事も初めてなのではないかと思い、誘ってみた。