恋がはじまる日
暑さがまだまだ残る、夕方五時過ぎ。
家に帰ると、お母さんが嬉々として浴衣を用意してくれていた。
「今年も椿くんと一緒にお祭り行くんでしょ!着付けしてあげるから、早くこっち来なさい」
「あ、ありがとう!」
何故お母さんがうきうきしているのかはよくわからないけれど、わざわざ用意して待っていてくれたのかな。嬉しく思いながら着付けてもらい、そのまま髪も上にまとめて結ってもらう。桜柄の浴衣に、枝垂桜の髪飾りがとても可愛かった。おばあちゃんが買ってくれた桜の組み合わせだ。
「うん!可愛い!気を付けて行ってらっしゃいね」
お母さんは自分の着付けた私を満足そうに眺めて、「はい」と巾着を渡してくれた。
「お母さんありがとう!行ってきます!」
私も可愛い浴衣を着付けてもらい、嬉々として家を出た。