恋がはじまる日

「椿!お待たせ!」

 玄関を出ると、ちょうど椿も家から出てくるところだった。


「おー…」


 元気に返事をしたかと思ったら、私をまじまじと見て固まる椿。あれ?可愛いと思ったのだけど、どこか変だったかな?


「椿?どうしたの?えっと、変だったかな?」

 そう声を掛けると、はっと我に返ったように椿は少し視線を逸らした。


「え、いや!すげー似合ってると思う…」

「ほんと?よかった!」


 椿の横に並びながら、可愛い浴衣とこれから行くお祭りにうきうきは最高潮だった。


「可愛すぎてびっくりした…」

「ん?」


 なにか言った気がして私が椿の顔を覗き込むと、慌ててまた顔を逸らされてしまった。


「なんでもない!さ、行こ!」

「うん!」


 なれない下駄に気を使いながら、私達はゆっくりと神社へと歩み始めた。

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