恋がはじまる日

「美音!大丈夫か!?」


 椿の姿を見た私は、ほっと胸をなでおろした。


「椿…よかった!合流できて!」

「美音、ほんとごめん!危ない目に遭わなかった?…って!なんで藤宮がいんだよ!?」


 藤宮くんを見た椿は飛び上がるほど驚いていた。


「溺愛してるわりには、役立たずだな、お前」

「うぐっ!うるせぇなあ」


 私と話している時の藤宮くんは基本的に優しい気がするけれど、椿と話す時の藤宮くんはちょっとだけきつい気がする。男の子同士ってこんなもんなのかな?



 それから結局、三人で出店を見て回り、三人で花火を見た。
 打ち上げ花火は、それはもうすごく綺麗だった。
 色とりどりの大輪の花々が空一面に咲き乱れて、昼間みたいに夜空を明るく照らした。美しい以外の形容詞が全く出てこない。筆舌に尽くしがたいとはまさにこのことだと思った。

 隣にいる藤宮くんも、ただただ花火を見続けていた。

 なんだかまた頬が熱くなるのを感じた。
 何なんだろう、この変にドキドキする感じ。
 暑さのせい、人混みのせい、きっと綺麗すぎる花火のせい。感動と興奮で暑く感じるだけだ。


 落ち着かない気持ちに蓋をして、私もただただ美しい花火を眺め続けた。


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