恋がはじまる日
* * *
「椿!」
幼なじみである美音の声で、俺ははっと目を覚ました。
うわ、また寝ちゃってた!と心の中で反省する。
眠気を吹き飛ばすため、勢いよく立ち上がり返事をした。
「おう!な、なに?」
俺が新学期早々授業中に寝ていたことを、彼女は窘めた。
「朝練があって早起きなのは知ってるけど、授業はちゃんと受けなきゃだめだよ」
彼女はそう言ってお昼ご飯を食べるため、いつもの友達グループの輪に入って行った。
ああもう昼休みか。
眠たい目をこすりながら彼女の姿を目で追う。ぼさぼさの前髪を直し、俺も友人が呼んでいる方へと向かった。いつものメンバーと適当な席に集まってご飯を食べる。
新学期初日だというのに、今日は全然授業を聞いていなかった。あとで美音にノート借りよーっと。
再び彼女の方へ視線を向けると、三人で一緒に机を囲みながら、楽しそうにお弁当を食べている。賑やかな笑い声が聞こえてきた。
その様子を見ていた俺まで、なんだか嬉しくなる。
「おーい、椿聞いてるー?」
「ああ、ごめん」
友人の一人に声を掛けられ、意識を自分のグループへと戻した。