恋がはじまる日
 俺のひとり言に対する真上からの返答に、驚いて顔を上げる。


「藤宮!?」

 あまりの驚きに大声を上げた俺の頭に、すかさず勢いよく肘を落とされる。


「いってぇー!!」


 藤宮は眉間に皺を寄せながら、

「静かにしろ、聞こえるだろ」

と屋上の二人を一瞥する。

 俺も同じように外に視線を向けると、美音がきょろきょろと辺りを見回していた。

「ふー、セーフ」

 二人は楽しそうに何かを話して笑っていた。


「美音、まさか告白したりとかしねーよな?先輩と仲良さそうだとは思ってたけど。つーかどっちから誘ったんだよ!」

 俺の与り知らぬところで、二人はやはり急接近していたのだろうか。
 俺が頭を抱えていると、存在を忘れたかった頭上の彼から返答があった。


「誘ったのは先輩だ」

「まじか!やっぱり美音に気あんのか!?……つーか、藤宮。なんでお前まで来たんだよ、まさか美音のことが気になるから、とか言わねえだろうな?」


 藤宮が何を考えてるか知らねえけど、これ以上美音にちょっかい出す奴が増えるのは許せないので、露骨に不機嫌そうな声で問いかけた。


 すると上から浅いため息が聞こえてくる。彼のうんざりした表情が目に浮かぶ。


「まさか」

「じゃあ、なんで」

「面白そうだから」

 即答か。まぁでもこいつはこういうやつだよな。美音のこと好きなのかと少し思ったけど。先輩よりは警戒することねえのかな。


 それはさておき。
< 73 / 165 >

この作品をシェア

pagetop