恋がはじまる日

「……」
「……」

 家庭科室の一角、私達の間にはただただ静寂が流れていた。

 二人きりで過ごすのは、やはりなんだか落ち着かないような気がしてしまう。
 とにかく役割分担をしないとだ。藤宮くんは料理とか絶対にしないと思うんだけど…。念のため確認しておかないとね。


「藤宮くん、包丁握ったことある?」


 そう素直に問いかけると、彼はあからさまに眉間に皺を寄せた。


「お前、俺のことばかにしてんの?」

「え!いやいやいや!そんなことないよ!」


 そうか、包丁握ったことあったか。だってあまりにも藤宮くんと料理って、イメージがかけ離れてるんだもん。男の子でも料理する人はするよね。失礼だったかも。


「じゃあとりあえず、藤宮くんは麺を茹でてもらってもいいかな?私が野菜切って炒めるから。あ、ホワイトソースもお願い。煮立ったら火止めてね」

「…ああ」


 藤宮くんも思ったよりちゃんとやってくれそうでよかった。私も野菜を切り始めなくては!頑張るぞー!
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