黒い龍は小さな華を溺愛する。
「離せよっ……」
「聞いてんのか?」
常盤くんは真顔なのに対して、相羽くんはとても苦しそうだ。
それもそのはず、手首がありえない方向に曲がっている。
「常盤くん!折れちゃう!」
私の方をちらっと見たけど、力を弱めない常盤くん。
「折れていいっしょ、別に」
その冷酷な表情にゾクッとした。
この前秋元さんの仲間を殴ったときのような……。
「辞めろっ……お、折れる!」
「じゃあ、もう沙羅になんもしねーって誓えよ?」
「沙羅は……俺の……だ……」
「まだわかんねーの?」
更に手首をひねり上げ、相羽くんが「いってぇー!」と騒いだ。
その時何人かが生徒玄関に入ってくるのが見えた。
やばい、他の人に見られちゃう!
「常盤くんやめて!」
二人の間に立ち引き離そうとしたら、ようやく力を緩めてくれた。
相羽くんはホッとした表情で赤くなった手首を押さえている。