黒い龍は小さな華を溺愛する。
「でさ、LIME教えて?」
え、急に?
LIMEは無料でメッセージがやりとりできるアプリだ。
確かにクラスメイトではあるけど、まだよく知らないのに教えていいのかな……。
戸惑っていると「じゃ、これ俺のQRコード!」と強引に私にスマホを渡した。
どうしよう、登録しないわけにも……。
その時「沙羅」と私を呼ぶ声がした。
後ろで寝ていたはずの常盤くんが頬杖をついてこちらを見ている。
「帰るぞ」
「常盤くんっあの、今……」
すると立ち上がって机に掛けてあった私の鞄を持った。
この行動に周りのみんなが注目している。
「おい、宇崎さんは今俺としゃべって……」
吉住くんの言葉を遮るように睨む常盤くん。
「沙羅は俺と付き合ってるから。お前とLIMEとか必要ねーだろ」
そう言って吉住くんにスマホを返した。
その瞬間教室中が驚きの声に包まれた。
一部では悲鳴に似た声も。