黒い龍は小さな華を溺愛する。
校舎の裏庭に行くと相羽くんと話したことを思い出す。
つい最近の出来事なのにもう遠い昔の事のようだ。
そう思えるのも常盤くんのおかげだろうか。
「いねーな。せっかく餌持ってきてやったのに」
「そうタイミングよくいないよね」
ミケはいつもここにいるわけじゃなく、学校近くの道路やコンビニでもよく見かけていた。
「ニャァ……」
その時植木の陰から鳴き声が聞こえた。
見ると、ミケが私たちを見つけて近寄ってきた。
「ミケ!」
「いたんじゃねーかよ」
常盤くんが猫缶を開けてあげるとミケは勢いよく食べていた。
それをしゃがみながら眺めている常盤くんの表情が優しくて、思わず私の顔も緩む。
ミケが羨ましいな、そんな風に見つめられて……。
フリだとしても、こんな人が私の彼氏だなんて信じられない。
するとその視線が私へ向けられドキッとした。