黒い龍は小さな華を溺愛する。

18時を過ぎると混雑のピークなのか、店は満席になった。

初日だからと、ラーメンを運んだり後片付け程度のことをやってみたけど、なかなかの力仕事で腕が痛くなってきた。

常盤くんとは仕事の事以外、まともに話す暇なんてなかった。

仕事中だから当たり前なんだけど……。


「お姉さーん、ビール追加ね」


「あ、はいっ」


「って、お姉さんめちゃくちゃ美人じゃない!?この店こんな美人いたっけ!?」


「あはは……そんなことないですよ」


21時ごろになると飲んだ帰りに寄る人も少なくなかった。


常盤くんにビールサーバーのやり方を教わっていると、耳元で


「酔っぱらいに気を付けろよ」


と、言われた。


「う、うん!」


急に近づいてきたからびっくりした。

この前のキスのことを思い出しちゃって耳が熱い。


「これ俺が持っていく」


「え、いいよ!このくらい」

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