黒い龍は小さな華を溺愛する。


「いい。あーいうのは俺が行くからあんたは相手にすんな」


そう言って私の手からビールの入ったジョッキを奪うと、颯爽と厨房から出て行ったしまった。


酔っぱらいもうまくかわせるようにならないと仕事にならないよね……。


足手まといにならないようにしなきゃ。


しかしそれからは厨房の仕事だけ任せられ、私はフロアに出ることはなかった。


「沙羅ちゃんと夕晴、もう上がっていいよ!お疲れさま」


「あ、はい!」


気付くと22時を過ぎていた。


「家まで送る」と、エプロンを外した常盤くんがバイクの鍵を持った。


「ありがとうっ」


なんだかこういうの、普通の恋人同士っぽい?


「お先に失礼しますっ」


篠原さんに声を掛けて外に出ると、常盤くんが横から抱きよせてきたので驚いた。


「ど、どうしたの!?急に!」


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