黒い龍は小さな華を溺愛する。



「沙羅さんと同じクラスの常盤夕晴といいます。遅くなってすみません」


バイクから降りた常盤くんが母に向かって頭を下げた。


「あのっ、今までバイトでね?常盤くんがここまで送ってくれたんだよ!?」


しかし母の顔は険しいままだ。

まさかこんな形で紹介することになるなんて……。


「沙羅と付き合ってるの?」


母の勘はするどい。

その問いかけに一瞬間があったけど、常盤くんは「はい」と答えた。


「数日前からお付き合いさせてもらってます」


まっすぐに母を見つめていた。

付き合ってるって言ってくれたんだ……。

しかもとても丁寧な言葉遣いで。


「……そうなの。ここまで送ってくれてありがとう。気を付けて帰ってね」


「はい」


母は私の腕を引っ張り歩き出した。


「あっ、常盤くんまた明日!」


振り返ってそう言うと常盤くんは笑顔を返してくれた。

お母さんの素っ気ない態度、変に思ってないといいなぁ……。


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