黒い龍は小さな華を溺愛する。


いくら常盤くんが甘い言葉を投げかけてくれても、それは同情して言ってくれてるだけ。

優しい人だから……。

だってお互いに約束したじゃない。

常盤くんは女よけのために、私はいじめられないように守ってくれると。

それがなくなれば私なんて用済みなんだから。

ドキドキしちゃってた自分がバカみたいだ。


……でもまだ引き返せる。


「大丈夫、わかってるよ……お母さん」


「わかってるなら……いいけど。ヅラでもなんでもいいからその顔隠しな!みっともない!」


「ごめん、でもこれだけは譲れない。上向いて歩くって約束したから」


「約束?って……誰とよ」


「ううん、おやすみ!」


母から逃げるように自分の部屋に入った。

髪を切ってから母になんて言われるか怖くてずっと避けていた。


〝いいじゃん!かわいくなったね!〟


そんな言葉を期待していた私がバカだったよね。


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