黒い龍は小さな華を溺愛する。
その時ふと一瞬、相羽くんの顔が見えた。
え……
口元が笑って……。
ガンッ!
その時辺り一帯にものすごい音が鳴り響き、土下座騒動で騒がしかったのが嘘のように静まり返った。
そして生徒たちの視線は一斉に音の方へと向けられる。
「なんだよ……アイツ」
すぐそばにいた相羽くんがそうつぶやき、私も顔を上げて音がした方を見た。
そこにはスラッとした高身長の男子生徒がいて。
下駄箱入れを殴ったのか扉がへこんでいた。
時が止まったようにみんな静まり返っている。
見たことない人……誰だろう。
下を向き、髪が顔にかかっていてよく見えない。
彼は下が制服のズボンだったけど上は私服のTシャツを着ていた。