黒い龍は小さな華を溺愛する。
「だって先生からそう言われたんだよ?はーっ、今日は高い寿司屋で同伴してからの出勤で楽しみにしてたのに気分下がるわーっ」
イライラしながら自分の髪の毛を巻いている。
「違うの……」
「ったく、面倒くさいから問題起こすなっつーの!」
母は私の話など聞く耳持たずだ。
「ごめん……」
ここで強く言えないのは、母の機嫌次第で夕飯代がなしになったりするからだ。
ほぼ毎日スナックで働いてる母だから、夕飯は母からもらったお金で買っている。
作ればいいんだろうけど、母が料理をしないためうちには調理道具があまりない。
「あ、それと今夜彼氏くるからどっかいっててくれる?あんたがいると彼氏もゆっくりできないし」
「え?」
「友達んちとかあるでしょ!?泊まってきてよ」
そう言って2千円を床にばら撒かれた。
私にそんな友達なんかいないのに……。
母に彼氏がいることは知っていたが、うちに泊まるのはこれが初めてだ。