黒い龍は小さな華を溺愛する。


本当は言いたかった。


襲われたんだよって。


怖かったって、泣き叫びたかった。


でも言ったところで?


『面倒』なんて言われて終わりかもしれない。


そんなこと言われたら余計に悲しくなりそうだ。


だから言わない方が利口。


中学でいじめられた時、どんなに辛くても母に言ったことはないもの。


歩道橋の上から見る大通りはネオンがすごく綺麗だった。


ちょうど帰宅ラッシュで車の往来も激しくて。


行き交う人たちはみんな楽しそうにしている。


世の中にはたくさん笑ってる人がいるのに……


私はなんで普通に過ごせないんだろう。


母は美人だとよく言われるのに、なんで私はこんな顔に生まれたの?


もう疲れた……。


全てが嫌になって涙が頬を伝った。


涙によってネオンの光が余計にまぶしく感じる。

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