黒い龍は小さな華を溺愛する。
常盤くんの世界
「なにやってんだよ!」
突然視界が一回転し、私は地面に転がった。
えっ落ち……たの!?
でも体は全然痛くない。
誰かが私の下敷きになっていたからだろうか。
「すみませんっ!」
咄嗟に退けたが、その人は私を庇ったせいで腕を痛そうにしている。
「ってぇ……」
「大丈夫ですか!?」
救急車を呼んだ方がいいのかと戸惑っていたら、その人はむくりと上半身だけ起き上がり、こちらに顔を向けた。
え、この人って……、
常盤夕晴くん!?
「……」
なんかずごい睨まれている。
こわい!
「ごめんなさいっ」
「死にてぇのかよ……」
「ち、ちがっ……」
違くないけど……
今のこの状況で死にたいなんていえるはずがない。
その時地面が揺れるのと同時に、数人が勢いよく歩道橋に上ってきた。