黒い龍は小さな華を溺愛する。
ぐっと抑えたはずの心臓の音がまた早くなっている。
勘違いするな沙羅。
紫藤くんもさっき言ってたじゃない、常盤くんは面倒見がいいって。
きっと死のうと思っていた哀れな私を放って置けないだけだ。
うん……きっとそう。
私は何度も自分に言い聞かせてからアパートの階段を上った。
帰宅すると母は泥酔になっていて、案の定私に抱きついてきた。
そして毎度お決まり文句の
〝私には沙羅しかいない〟
といいながら泣きつく。
彼氏がいる時は私よりも彼氏を優先するくせに。
でも私はそんな母を慰めるのが恒例になっていて、そうすると自分自身も母に必要とされているんだって安心できた。
今日はなぜかモヤモヤしていた。
さっき常盤くんに自分を変えたくないのか聞かれたからだろうか。