黒い龍は小さな華を溺愛する。
2*
悪魔のしわざ
桜の花が散り、春なのにまだ肌寒い風も時折吹く4月下旬。
枝に小さな緑が増えて行き、これから新緑の季節を迎える準備をしているこの時期がいつも好きだった。
桜並木があるこの通学路だけは上を向いて歩くことができる。
木や鳥は私を見て笑ったりしないから。
「えーっそれ可愛い!」
「でしょ!?あとで貸してあげるよ」
1年生の女の子たちが楽しそうに話をしながら私を追い越していく。
私も変われたら……友達ができて、あんな風に楽しく学校に行くことができるのかな。
そんな淡い期待を抱きながら、生徒玄関に入る。
昨日の事を思いだしてハラハラしたが今日は声を掛けられなかった。
ホッとしたのも束の間、自分の下駄箱を見てドキッとした。
私の上靴がなくなってる……。
こんなこと中学の時以来だ。
ブーッブーッ
突然のメール。
それは相羽くんからだった。
開くのが怖くてスマホを持つ手に力が入る。