黒い龍は小さな華を溺愛する。
中三になって同じクラスになったのが、相羽晃汰(あいばこうた)くんだった。
相羽くんは明るくていつもクラスの中心にいるような人だった。
頭も良くて先生からの信頼も厚い優等生で。
女子からも男子からも好かれている、私とは正反対の人。
そんな人が私に声を掛けてくれたんだ。
しかもみんなの前で……。
『宇崎さん、よかったら友達になろうよ』
一瞬クラスがどよめいたが、それ以来いじめが減っていって。
頻繁に話しかけてくれたり優しくしてくれたり。
そんな相羽くんのことを好きになるのに時間はかからなかった。
だって、私にそんな風に普通に接してくれる人、今までいなかったから。
私はすっかり忘れていたんだ。
そんな高嶺の花に好意を持つなんて許される人間じゃないってことを。