私の想いが開花するとき。
里穂の心の中の想い人、何年転勤になるか分からないと言われ台湾に転勤していた宏太が結果二年間台湾に転勤し、ついに先週帰ってきたのだ。宏太の事を知らなかった女子の新入社員達はそれはもうキャーキャー黄色い華やかな声ではしゃいで、女の目で宏太を見つめていた。
宏太は綺麗な黒髪に黒目勝ちの瞳は鋭く、整った顔だ。冷たいと思われがちな容姿に気だるげな艶がある宏太はクールだと思われがちだが実際は情に厚い男だ。なんだかんだと同期の里穂の事を気にかけてくれるいい奴。けれど宏太にとって里穂は仲の良い同期なだけで恋愛感情はない。二人で飲みに行っても男と女の雰囲気になる事は一度もなかったのだから。
宏太が転勤になると聞いた時はどうしようかと悩んだのもだ。告白をして自分の気持ちを伝えるか。けれど結局自分に臆病で、もしも想いが伝わらずに友達でさえなくなってしまうのが怖くて里穂は仲の良い同期でいることを選んだのだ。
臆病な私は今も昔も変わらない。怖くて全ての現実から目をそらす。
「お前さぁ」
宏太の声のトーンが少し下がった。そんな些細な事さえも気づいてしまう自分が嫌だ。
「な、なに?」
「俺のいない間になんで結婚してんの? 俺知らなかったんだけど」
キーボードに添えられていた里穂の左薬指に光るリングを指でつついてむすっとした顔を見せてくる。宏太だけが同期で里穂が結婚したことを知らなかったから拗ねているのだろうか。
身体が、熱い。