私の想いが開花するとき。

 触れられた指が敏感に宏太の熱を感じ取る。身体の隅に仕舞い込んで蕾んでいた宏太への想いがまた、大きく開花してしまいそうだ。


「あぁ……うん。結婚しちゃった」


 駄目だ、と思いを振り切るように里穂は笑って答えた。


「しちゃったって、お前なぁ。結婚してるのに何こんな時間まで残業してんだよ。旦那が家で待ってんじゃねーの?」


 デスクに肘をつき頬杖をつきながら宏太は里穂を覗き込んだ。その瞳にはミディアムボブの髪の女性が映し出されている。しっかりと里穂は宏太に見つめられ思わずぱっと顔を反らした。


 頬が、熱い。


「ま、待ってないよ。旦那も残業だって」
「新婚なのに旦那も残業なのかよ」
「まぁいつものことだし気にしてないよ」
「……いつもなのか?」
「うん。帰っても誰もいないし、なら私も残業して稼ごうかなって」


 ハハッと笑ってみせた里穂。その瞬間カリッと薬指に刺激が走った。宏太が里穂の左手にはまっているリングをカリカリと外すように指で掻いてくる。


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