私の想いが開花するとき。
(な、なに……?)
宏太の意味の分からない行動に里穂は困惑し、そして勘違いしそうになる。宏太が拗ねている、と。
「……宏太?」
「お前さ、俺のこと好きだったんじゃねぇの?」
心臓を大砲で貫かれたような衝撃だった。図星で里穂の声が震えそうになる。
「な、何いってんの?」
「なんでお前結婚なんかしちまったんだよ。ずっと俺のことだけ見てればよかったのに」
左手をぎゅっと握られ宏太の熱に包まれる。人の肌の温もりが手だけでこんなにも気持ちいいなんて知らなかった。どくどくと異常なスピードで動く心臓、身体から飛び出てしまいそうだ。
「こ、宏太ってば何言ってるの〜!」
明るく平然を振る舞う里穂に宏太は更に手を握る力を強めた。
「里穂」
鼓動が大きく波打った。宏太の優しい声で名前を呼ばれるなんてもう抑えていた気持ちが完全に開いてしまいそうになる。
宏太の大きな手のひらに頬を包まれ、二人の間の空気がジリっと濃くなった気がした。熱い瞳で見つめられ勘違いしそうになる。二年前までは男と女の関係になるような雰囲気が一ミリもなかった宏太が、今自分を求めてくれているのではないかと。