俺様外科医は初恋妻に一途な愛を貫く～ドＳな旦那様の甘やかし政略結婚～

たしかに父から、私の結婚相手は相馬総合病院を継ぐ男性だと言われていたけれど、それは光一さんだと信じて疑わなかったのだ。

「もちろん私もまだまだ現役だがね。今後隆成には副院長として働いてもらうことになった」

「どうして光一さんじゃないんですか？」

動揺し、思わず直球で訊いてしまった。

後継者は長男の光一さんだと暗黙の了解だったはずだ。

「僕は岡山県の無医島に渡って、診療所を開くことになったんだよ。千里ちゃんにも話したよね。僕は離島医療に関心を持っているって」

光一さんのお父さまの代わりに、彼自身が答えた。

たしかに何度も聞いた。そのために総合診療科医という、全身を多角的に診る科目を選択したのだと。すべての患者に寄り添い、医療の提供をしたいのだと――。

でもまさか実家の病院経営に携わらず、本当に実現するとは思ってもみなかった。

「私は同じ医師として、光一の英断を誇りに思う」

光一さんのお父さまが、しっかりと彼の後押しをした。

こんなことって……。

目の前が真っ暗になる。