俺様外科医は初恋妻に一途な愛を貫く～ドＳな旦那様の甘やかし政略結婚～

順当に進めば、今頃千里は兄の妻になっているはずだった。

それが覆ったのは八年前だ。

俺が日本の医大を卒業し、研修医として働き始めた頃で、千里は二十歳を迎えようとしていた。

『光一と千里ちゃんの婚約の時期はいつがいいだろうか』と、両親たちが話し合っている場に居合わせた。

まさかもうそんな話が出るとは。

まだ先のことだと思っていた俺は焦燥感に駆られた。

相馬総合病院を継ぐのと、千里と政略結婚をするのは対だ。

兄には昔から、無医島に渡って診療所を開くという夢がある。

そしてそれだけでなく、千里との結婚を望まないある理由があった。

それもまた、知っているのは俺だけだが、たとえ両親や親族に打ち明けたとしても、兄の個人的な感情など認められはしないだろう。

千里を俺のものにし、兄も思いを遂げるにはどうすればいいのか。

兄に代わる病院の後継者を作ればいい。

もちろんそれは、誰にも文句を言わせないくらいの実力を兼ね備えた医師でなければだめだ。