俺様外科医は初恋妻に一途な愛を貫く~ドSな旦那様の甘やかし政略結婚~
初日だからと張り切ってごちそうを作るのもな……と、冷蔵庫を覗きながら考え込んだ。そもそもごちそうなんて作れないけれど。それにたぶん隆成さんはなにも意識していないだろう。記念日とかそういうのは忘れそうなタイプだ。

普通がいいかな。

メニューを決め、野菜を取り出した。

隆成さんは予定通り、午後六時に帰宅する。

「ただいま」

「おかえりなさい」

玄関まで出迎えた。

不本意な結婚でも、できる限りは歩み寄ってみると心に決めたからだ。

隆成さんが嫌いだからといって、露骨に態度に出すのはおとなげない。

ここまで来たら、彼の妻として務め上げるしかないのだ。

そもそも政略結婚とは前提に愛がないものだし、悲観してもしかたがない。結局は考え方次第なのだと、私は自分に言い聞かせていた。

「先にお風呂にしますか? 晩ごはんもできあがっていますが」

「千里、料理できるのか?」

意外そうな反応に、苦笑いした。

なにも作れないと思われていたようだ。

「半年前からお料理教室に通っているので、基本的なものなら作れます」

「へえ」

< 22 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop