俺様外科医は初恋妻に一途な愛を貫く～ドＳな旦那様の甘やかし政略結婚～

注目の的になる中、エリザさんは背伸びし、隆成さんに顔を近づける。

『なにをするんだ』

素早くかわした彼の頬を彼女の唇がかすめ、真っ赤なリップが付着した。

隆成さんははっと私を振り返り、めずらしく慌てた表情になる。

「エリザはアメリカで世話になっていた大学教授の娘だ」

「……言い訳はけっこうですが、ここは医局の廊下なので、お部屋に入ってからのほうがいいのでは。さすがに節度は保ってくださいね」

冷ややかに指摘し、隆成さんとエリザさんにお辞儀して踵を返した。

みんなの好奇の視線が痛い。

「おい、千里……」

引き止める彼の声を無視し、階段を駆け下りる。

さすがに妻の前でほかの女性とキスしようとするなんてありえない。

実際の私たちが夫婦未満の状態でも、それとこれとは別の話だ。

エリザさんがアメリカでお世話になっていた大学教授の娘というのは、嘘ではないだろう。

でもたとえアメリカでも、恋人同士でなければ口にキスしようとはしないはずだ。