俺様外科医は初恋妻に一途な愛を貫く~ドSな旦那様の甘やかし政略結婚~
「本当だ。冷静に考えてみろ。真面目な兄さんが千里のお母さまの言いつけを破って、千里の部屋に入ると思うか?」

「……思いません」

たしかに光一さんなら、素直に従って帰ったはずだ。

「俺がお義母さまの目を盗んで侵入したんだよ。おまえの記憶違いだ」

ではあの日、熱で意識が朦朧としていた私は、隆成さんを光一さんだと思い込んでしまっていたというのだろうか。

しかもそれが二十年ぶりに発覚するなんて。

「おまえが言う〝光一さん〟に頭を撫でられて、おまえはなんと言った?」

「……『元気になってきたよ』って。それから……」

「それから、『すごいね。お医者さまの手だね』と、続けただろ?」

まっすぐに見据えられ、瞬きも忘れてしまった。

隆成さんの言う通りだ。

私と光一さんしか知らないはずの会話を言い当てられ、あれは隆成さんだったのだともう認めざるを得なかった。

じゃあ私はあの日、隆成さんを好きになったというの?

とはいえ、ついこの間まで思いを寄せていたのは光一さんで……。

頭の中が大混乱してくる。

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