ひとりぼっちの僕

バレンタインデー⑥

詳しく聞くと、僕の通っていた大学の後輩と言っていたらしい。

僕の名前も知っていた。

僕見た夢と彼女が送ってくれたことは何か関係しているのだろうか?

頭の中がごちゃごちゃになるのを感じた。

思い出そうとしても三人で飲んでいると急に電気が消え、再び点くと知らない光景と知らない人がいたのだ。

そして目が覚めると家のベッドで寝ていた。

だれがこれを理解することができるだろうか。

お店のドアが開き僕の隣に誰かが座った。


彼女だった。

彼女が一年生の時に僕が単位のことで会って説明して以来、まともに見るのは久しぶりだった。

彼女はマスターにおまかせでと言うとマスターはカクテルを作り出した。

沈黙がしばらく続いた。

「この前は部屋まで送ってくれたんだってね。ありがとう。実は何も覚えていないんだ。不思議な夢を見たのは覚えているんだけど…」

彼女は何も言わずカクテルをひと口飲んだ。

「大学生活は順調かな?君なら僕と違って問題はなさそうだ」

彼女は時計に目をやるとテレビで上映されている映画に目を向けた。

もしかするとあの日の夜、僕は彼女に悪いことでもしたのだろうか?

彼女は手の甲に顎を乗せ天井から吊るされたテレビ画面をじっと見つめていた。

「この後、時間はあるかい?良かったら僕の部屋で一緒に飲まないかな?大して面白いDVDはないが酒のつまみくらいにはなると思う」

そう言うと彼女は僕の方を覗き込み、もう一杯飲んでいいからしと言った。

僕はマスターを呼びもう一杯作ってもらった。

支払いをしようとすると彼女へのお礼だからとマスターは断った。

せめて僕の分は払うと言ったが、先輩が私からのバレンタインプレゼントよと断られた。

お店を出て僕の部屋へと向かった。

「あなたはいつもそうなの?しかるべき時にしかるべきことをしない」

僕は何も言わなかった。

「だから私から知人に頼んだの。あなたに教えてあげてって。多少強引だったかもしれないけど、あなたはそうまでしないと何もしない」

僕があのサンタクロースは誰だったのか聞いたが、あなたには関係ないと遮断された。

「今日は全てあなたの奢りよ。これでこの前のお礼はなかったことにするわ」

僕はうんと頷いた。
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