狂おしいほどに愛してる。



『……俺、親が決めた相手と結婚しないといけなくなった』


『え……?』


『だからごめん。……別れてほしい』



大学四年生の秋。彼にそう別れを告げられた時、私は別れたくなくて泣いて縋りつき、そして未練だけが虚しく残った。


彼を忘れよう、忘れようと必死になって、新しい出会いを探したりもした。


けれど、結局彼以上に好きになれる人には出会えなかった。


……あの日々を忘れるには、チハヤとの思い出が多すぎた。


私の青春は全てチハヤに彩られていたため、何をどうしても忘れることなんて不可能だったのだ。


でも、そんな彼は会社のために他の女性と結婚している。


家庭なんて成立するわけがない。彼はそう言っているけれど、じゃあどうして結婚したの?


会社のためなのはわかる。彼の父親は何代も続く大企業の社長だ。


そもそも、私がそんな御曹司の彼と付き合っていたことがまずあり得ないことなのだ。


そう思ってどうにか踏ん張って生きてきた私は、彼と再会した時にどうしようもないほどに気持ちが膨れ上がった。


好き。大好き。やっぱり、チハヤが一番大好き。


涙がこぼれ落ちる私をぎゅっと抱きしめてくれたチハヤ。



『……俺ん家、来る?』



その誘いが、運命の分かれ道だったのだろう。


あの日に頷いてしまった私は、どうすればチハヤのもとを去ることができるのだろう。

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