青時雨
プロローグ

 なぜ出会ってしまったのだろう。
 
 彼を愛していると気付いたときから、何度もそう考えた。
 
 この広い世界で二人が出会う奇跡は、ハッピーエンドを約束しない。
 この世界では、悪い魔法使いに眠らされたままの白雪姫や、王子様が探しに来てくれないシンデレラがたくさん、誰にも知られないまま泣いている。

 それが大人の世界だと気付いた頃には、反対に生き抜く(すべ)も身に付けていた。

 深入りしすぎないこと。
 愛しすぎないこと。

 でも私たちは、出会ってしまった。

 行く先には破滅しかないと知りながら、お互いの手を離すことが出来なかった。

 静かに、雨に打たれながら。
 青時雨(あおしぐれ)に、濡れながら──。
 
 
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