蛍のような

「かなと?行くよ??」
『はーい!移動教室だよね!絶対迷う!』
「やめて恥ずかしいから。」

私は春間 奏斗(はるま かなと)
両親が男の子が生まれるであろうという予想でつけられた名前。
高身長に育って、もうショートカットにしてしまった。
高校デビューってやつ。
高校生になって数週間がすぎた。
友達もできたし、くらい私にしては上々だと思う滑り出しだ。

「かなとさ、また先輩に告られたの?」
『え?あー…男の子と勘違いされてね』

控えめに笑って見せると彼女はため息をついた。

「あのさ、かなと。」
『うん?』
「私、好きな人ができたの」

え。

顔を見ると耳まで真っ赤に染まっていた。
もう由奈(ゆな)に好きな人が!?
興味が湧いた。

『だれだれ』
「えーっとね?その…隣のクラスの三神 勇之(みかみ ゆうじ)くんが好きなの」

三神…。
その名前には聞き覚えがあった。
いや、聞いたことないわけがなかった。

『そっか…みかもここの学校だったんだ…』

みかは幼なじみで、小学生の頃はよく遊んでいた。
家が隣だったけど、中学の時ゆずがいなくなってからは疎遠になってしまっていた。

「かなと??」
『あー、ごめん。うん、良いんじゃない?かっこいいし』
「そうなの!かっこいいの!」

そんな話を数時間した後は体育の授業が待っていた。
この学校の体育は2クラス合同で行われる。

「三神!」
「おう!」

隣のクラスならば当然一緒になってしまう。
ふとみかの方を見るとみかはこっちに向けて思いっきりピースをしていた。

…誰だアレ。

盛り上がる女子に耳を塞いでその場でしゃがみこんだ。

…いやほんとに誰!!

俺の知ってるみかは女の子にモテるくせに嫌いって感じでめんどくさいって言ってたのに!!正気かこいつ!!

「大丈夫??」
そう声をかけてきた人物はやはりみかだった。

『…』
「見つめられると照れるよ俺」
『はぁ…三神くん…だっけ?ありがとう』
「いいよ。気にしないで。それより大丈夫?保健室まで運ぼうか?」

気持ちが悪い。

『みかはそんなこと言わない。』
「え?」
『みかは照れるなんて言わない』
その瞬間口を塞がれた。
あ??

「すみません、体調悪そうなんで保健室連れて行ってきます」

…で、明らかに保健室ではない部屋に連れられました。
はぁ。

「お前、誰?」

髪をかき揚げ目付きが変わった。
こっちも私の知らないみかだ。

『誰って…隣の家に住んでるのにもう忘れたの?』

「…お前、はるか!なんでこの学校に…」

『それはこっちが聞きたいよ。
ちなみに私は部活の推薦。文学部が強いんだってさ。』

「いやどうでもいいし…まあいいや。
明日から一緒に登校する。お前に過去をばらまかれたら堪らないしな」

よく分からない。
なぜこんなに焦っているのか。

わからない。

その後は普通に授業を受けて下校をした。
みかは意外とモテるらしい。
きっとショートカットの髪型じゃなければ酷いいじめを受けていただろうぐらい噂が広まった。
もちろんゆなには説明をした。
ゆなも疑ってごめんと頷いて聞いてくれた。
だけど、届かなかったみたい。

次の日から友達がいなくなった。

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