片恋プロセス
4
結婚して1年半が過ぎた頃、母親から
急に電話がきた。
「七海ちゃんがどうしても幸太に話を
聞いて欲しいって言うんだけど」
しかも華も一緒で良いと言ってる。
このまま会えないと言えばそれで
済むものの、突然別れを切り出した時の
罪悪感が拭えず、無碍にできない
思いがあった。かといって華に
秘密にするのは考えられない。
華の了承を得て、華が一緒に来
てくれるならば話を聞くということで
その時は話を終える。華に正直に話し、
一緒に聞いて欲しい事を伝えると
はじめは驚いていたが、“わかった”と
何かを悟った様子で 言った。
何の話かも分からなかったが、
ただこうやって連絡をしてきたと
いうことはそれなりの話なのだろう、
だったら他の人の目があるところでは
話し難いだろう。かといって、
俺たちの家に呼ぶには気が引ける。
だったらと思い会う場所は実家にした。
この年になって言うことではないが、
実家だったら親の目もある。
俺なりの華への配慮のつもりだった。
七海に会って、変わりない姿に安心した。ただそれだけだった。あれだけの期間、
七海と付き合っていたはずなのに、
七海を前にしても揺るがない気持ちを
認識し、“華が好きなんだなぁ”なんて
こんな場で悠長に浸ってしまった。
だからこそ、七海の話を聞いて俺だけが
幸せなのは申し訳ないと思い、
出た言葉だった。
あの言葉でどれだけ華を傷つけたことか。
怒りをあらわにしていた華だが、
その奥には哀しみが溢れていた。
こんな顔をさせたかったわけじゃない。
俺がもっと華に気持ちを伝えていたら
何かが違っていただろうか。